固定撮影
固定撮影は風景写真を撮ったことのある方にはとても馴染みやすく、もっともポピュラーで手軽な方法です。風景写真を撮るシャッタースピードをちょっと遅くする・・そういうライトな感覚で撮影してみましょう。

北極星付近・乗鞍岳駐車場にて
ISO100・F4で30分露光
PROVIA100F
固定撮影は風景撮影の延長線上
固定撮影は、昼間に風景写真を撮るのと同じく三脚にカメラを固定して撮影します。バルブモードを使い長くシャッターを開けることになりますのでレリーズは必須です。
星は空を動いていくので、撮った写真には星は線を描いて写ります。シャッターを開ける時間が長いほど、またレンズの焦点距離が長いほど、星の描く軌跡は長くなります。

撮影はできるだけ暗いところで
街の明るい夜空ではシャッターを長く開けると明るく写りすぎて星が見えなくなってしまうので、できるだけ郊外へ行って撮影しましょう。シャッターを開ける長さは、その付近の明るさとフィルムの感度に左右されます。光害の少ない山奥(参考サイト)に行けばいくほどシャッターを長く開けて星の軌跡を長く写せます。

ミラーアップ衝撃によるブレを防ぐ
頑丈な三脚を使用してがっちりと固定していても、撮影した写真では星の描く軌跡の始まりと終わりが歪んだりしていることがあります。これはカメラのシャッターを切るときにカメラ内のミラーが跳ね上がる、いわゆるミラーアップ衝撃によるブレです。面倒ですが簡単な作業でこれを回避できます。
厚紙に黒い画用紙を貼り付けたシャッター板を自作し、これをカメラのシャッター代わり使います。まず自作シャッター板でレンズを塞いでからレリーズでカメラのシャッターを切り、自作シャッター板をレンズの前からどけて露光を始めます。露光終了時にもまず自作シャッター板をレンズ前にあて、レリーズでカメラのシャッターを閉じる。そうすることでミラーアップ衝撃により軌跡がブレることを防げます。

露光中の注意点
軌跡を長くするためにはシャッターを開けておく時間を長くする必要がありますが、撮影途中で星が雲に隠れてしまったり、人がレンズの前を通ったりする確立が高くなり、そのたびに軌跡が途切れてしまうので、天候や撮影場所の選択に注意が必要です。
レンズは開放にするより1〜2絞り絞って写したほうが、収差が少なく、明るさに偏りのない(周辺光量の低下の影響を受けにくい)きれいな写真になります。しかし絞れば絞るほどレンズに入ってくる光は少なくなりますのでF値のできるだけ小さい、明るいレンズで撮影することをお薦めします。

夜景と光の反射する雲の流れや星を捕えた。
ISO400・F8で12分露光
Fujifilm RMS
仕上がりを予想し、作意を加える
真っ暗な場所でシャッターを長く開けておく撮影ですから、ファインダーを確認し辛いものですが、フレーミングにも気を配りましょう。電線など撮影の障害物になるもののないことを明るいうちに確認しておくことも必要です。
撮る方角によって星が描く軌跡が違うことも頭に入れておけば、思い通りの楽しい撮影ができるでしょう。山や木々などの輪郭、薄雲などが写るようにすれば、もっと面白い写真が撮れそうです。
街明かりや電灯の明かり、車のテールランプなど人工的な光は全般に「光害」と呼ばれ、天体撮影には嫌われる状況です。しかしそれを逆手に取ることで幻想的な仕上がりになることもあります。星と夜景を一緒に写しこむような撮影にもチャレンジしてみましょう。露光時間の見極めはとても難しいものですが、シャッターを開ける時間の長さを変えて数枚撮っておけば、その街明かりでの適正な時間が掴めるようになりますし、その積み重ねが昼間の風景写真撮影の露出操作においても応用できるようになることでしょう。

木々と点像のオリオン座周辺をフレーミング
木々の赤い色は車のテールランプの反射
ISO1600・F3.5で約25秒露光
PENTAX *istD+Tokina 20-35mm
固定撮影で星を点像に写す
固定撮影でどうしても星を点に写したいのであれば、厳密には多少星像は流れますが星が点像に写る「追尾撮影」に近い撮影が望めないこともありません。
35mmくらいまでのF値の小さい明るい広角レンズで絞りを開放にし、ISO1600や3200のフィルムで撮影時間を約1分以内にして試してみましょう。星を点像に写すための露出時間は下の表をご参考まで。
赤道上 赤緯±40゜ 赤緯±60゜
28mm 25秒 36秒 50秒
35mm 20秒 30秒 40秒
50mm 14秒 20秒 28秒
105mm 7秒 10秒 14秒
135mm 5秒 7秒 10秒
200mm 3秒 5秒 7秒
ビクセン天体望遠鏡ガイドブックより
星を点像に写すには秒単位でのセンシティブな露出制御が必要ですので慣れないとアンダーになったりオーバーになったりしますが、星の軌跡を写しこむ一般的な固定撮影よりは露出時間を短縮できますので、風景写真と同じように短時間で段階露出し、露出の失敗をカバーできます。
天の川や星座の撮影には手軽でいいと思いますし、フレーミングを変えることも効率的、さらに機動力も増します。サッと撮ってパッと移動・・場所を変えつつ撮影するのも楽しいものです。
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